◆絵はがきセット〈重文 菜蟲譜(さいちゅうふ)〉伊藤若冲筆(8枚組)◆
伊藤若冲 江戸時代・寛政2年(1790) 佐野市立吉澤記念美術館蔵
サイズ |
15.0×10.5cm |
仕様 |
8枚組 タトウ入 |
印刷方法 |
オフセットカラー |
伊藤若冲(いとう じゃくちゅう)
享保元~寛政12年(1716~1800)、京都生まれ。家業の青物問屋のかたわら狩野派を学ぶが、39歳で家督を弟へ譲り、絵に専念する生活に入る。元・明の古画と光琳派という和漢の装飾画を研究するかたわら、動植物の写生に勤め、特に鶏の絵を得意とした。独特の画風から「奇想の画家」と呼ばれた。代表作は『動植彩絵』。
折々の絵はがき
なんて豊かな絵なのでしょう。きのこのしっとりと湿った手触り、柿のひんやりした硬い皮、思った以上に鋭い栗のいがなど、眺めていると、いつか自分が見た、触れた、食べた記憶が次々と呼び覚まされます。今日の晩ごはんは何にしようかとつい考え始めてしまうのも仕方ないこと。こんな絵を描く作者もきっと食べることが好きだったに違いありません。
野菜と果物を題材にした絵は「蔬果図そかず」と呼ばれ、中国で生まれたものが日本でも独自の発展を遂げました。伊藤若冲が晩年に描いた重要文化財〈菜蟲譜さいちゅうふ〉は、11メートルもの巻物に100種類を超える野菜や果物がならび、後半には蝶やとんぼなど50種類もの虫や蛙が登場します。生命力をたたえた野菜や生き物が静かに描かれる様子からは、若冲が「かなわない」と感じていることがうかがえます。自然が生む野菜の美しい造形も、花粉を運ぶ虫も、虫を食べる蛙やとんぼも、そこはひとが入る隙もなく完成された世界だと考えていたのではないかと思うのです。「見てごらん」と言われているような気がします。花のようには愛でることをしない「蔬果」も、一つとして同じものがない、こんなに愛らしくきれいなものなのだと。
京都の青物問屋に生まれた若冲は、きっと子どもの頃から野菜をおいしく食べていたのでしょう。見て、描き、食べる。暮らしのなかでだれも取り立てて目に留めないことをそっとすくいあげる、歳を重ねた若冲の姿に「かっこいいなあ」とため息がもれました。
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